INTERVIEW
代表取締役社長が語るwatanomama
1976年生まれ。
愛知県名古屋市出身。
平成22年代表取締役社長に就任。
現在に至る。
私たちは100年以上にわたる綿紡績の経験と技術があるので、他社との違いを明確に打ち出す必要があります。他社と同じようなことをやっていても、結局は価格競争に巻き込まれてしまう。ならば、経験を生かし、社員たちに新しいことにチャレンジしてもらいたい、そう考えていました。幸い、watanomamaでは、このチャレンジングなプロジェクトに若手も手を挙げて、若いからこその新しい発想をしてくれたことを本当に嬉しく思います。繊維とは、基本的なことを真面目にコツコツ積み上げていくことが重要。30〜40年携わった後でも、社員に「繊維をやっていてよかった」と言ってもらえるよう環境を整えていくことが私の役割だと思っています。
長年コットンと向き合い、道草や遠回りをしてきて、結局綿製品は糸が大事という結論に辿り着きました。糸にする前の工程をいかに精密化できるかが鍵です。そこで、糸づくりを一から見直しました。「我々にしかできないことは何か?」とつねに問いかけ、スタッフにも積極的に働きかけました。“世界一の糸をつくろう”という思いも共有しています。2020年には、西印度海島綿協会とパートナーシップを結び、世界最高峰の超長綿である海島綿を中心としたプロジェクトも進行中です。
実は、watanomamaは当初、明確な開発コンセプトがないままスタートしたプロジェクトでした。正直なところ、はっきりとした勝算があったわけではありません。経営者としては甘いかもしれません。しかし、我々にしかできない、世の中にないもので、世の中の人たちに喜んでもらいたい、その思いがずっと根底にありました。ビジョンを持って諦めないでやり続けてきました。簡単な道ではありませんが、たとえ5〜10年かかったとしても、しっかりと根付いてほしい。ゆっくりでもいいので、大切に、ものを売って行きたいと考えています。
初めてwatanomamaに袖を通した時、「裸じゃないの?」と思うほど、着心地が良かったんです。最高峰のシャンパンメーカー、クリュッグファミリーに赤ちゃんが生まれたらシャンパンを一口舐めさせるという逸話を思い出し、このwatanomamaが生まれたての赤ちゃんの肌に初めて触れる素材であってほしいと思いました。綿の良さ、今までにない綿の可能性を強く感じたのです。
遺伝子組み換えやオーガニックなど、コットンを取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。遺伝子を組み換えても環境に良いものならポジティブでありたい。果たして本当にオーガニックだけでいいのか?など、環境、オーガニック、技術とのバランスをみなさんと一緒に学んでいきたい。また、今まで軍手や防音材に使用されていた短い糸や糸くずを他の製品に転換したり、使いつくしたデニムを裁断し再利用したりするなど、リサイクル、アップサイクルも考慮したものづくりが求められます。
綿にこだわる近藤紡績所だからこそ、多面的に見ていく必要があると痛感しています。孫の代まで綿が取れるような世の中であってほしい。watanomamaを通して、私たちが世の中にどう貢献できるかを考え続けます。